福祉用具を勧めても、「まだ大丈夫」「そんなものは必要ない」と本人が嫌がる。
介護の現場では、とてもよくある場面です。家族としては安全のため、生活を楽にするために選んだつもりでも、思うように使ってもらえず、悩んでしまうことも少なくありません。
ここでは、福祉用具を嫌がるときに、本人の中で何が起きているのか、その本当の原因について整理していきます。
福祉用具を嫌がるのは「わがまま」ではない
まず大切なのは、福祉用具を嫌がることは、決してわがままや頑固さだけが原因ではない、ということです。
多くの場合、本人なりの理由や不安、プライドが背景にあります。それを理解しないまま勧めてしまうと、かえって関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。
本人が使いたがらない主な理由
① 「できない人」になったと感じてしまう
杖や歩行器、車いすなどの福祉用具は、本人にとって「自分はもう以前の自分ではない」と突きつけられる存在になることがあります。
道具そのものではなく、使うことで失われた自信を実感してしまうことが、強い抵抗感につながります。
② 周囲の目が気になる
外出時に福祉用具を使うことで、周囲からどう見られるかを気にする人は多いです。
「年寄りに見られたくない」「弱っていると思われたくない」という気持ちは、年齢に関係なく自然な感情です。
③ 使い方が分からず不安
新しい福祉用具は、本人にとっては慣れない道具です。
正しく使えるか分からない、転びそうで怖い、失敗したら恥ずかしい。こうした不安が、「使いたくない」という言葉になって表れることもあります。
④ 家族に迷惑をかけていると感じる
福祉用具を使うことで、家族の手間が増えるのではないか、と気にする人もいます。
「これ以上迷惑をかけたくない」という思いが、遠慮や拒否につながるケースも少なくありません。
家族がやりがちな逆効果な対応
「危ないから」「必要だから」と正論で押す
安全のために正しいことを言っていても、本人の気持ちが置き去りになると、反発を招きやすくなります。
「言われなくても分かっている」という気持ちが強くなり、かえって使わなくなることもあります。
無理に使わせようとする
無理に使わせると、「福祉用具=嫌なもの」という印象が固定されてしまいます。
結果的に、必要な場面でも拒否が強くなることがあります。
使ってもらうための考え方のヒント
① 「できないから」ではなく「楽になるから」
福祉用具は「できなくなったから使うもの」ではなく、「今の生活を楽に続けるための道具」と伝えることが大切です。
「これを使えば、今までと同じことが続けやすくなる」という視点で話すと、受け入れやすくなることがあります。
② いきなり常用しない
最初から「毎日使おう」とせず、「調子が悪い日だけ」「夜だけ」など、限定的に使う方法もあります。
成功体験を積むことで、抵抗感が和らぐことがあります。

③ 第三者の言葉を借りる
家族の言葉よりも、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員など、第三者の説明のほうが素直に受け入れられることもあります。
本人の状態や生活を見た上での提案は、「押しつけ」になりにくいのが特徴です。
福祉用具は「奪うもの」ではなく「支えるもの」
福祉用具は、できないことを増やす道具ではありません。
本来は、できることを守り、続けるための道具です。
その意味が本人に伝わるまでには、時間がかかることもあります。焦らず、気持ちに寄り添いながら進めることが大切です。
まとめ
福祉用具を嫌がる背景には、プライドや不安、周囲への気遣いなど、さまざまな感情があります。
「なぜ使いたくないのか」を理解しようとする姿勢が、結果的に受け入れへの近道になります。
一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、その人らしい形を一緒に探していくことが、介護を続ける上での大切なポイントです。






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